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はじめに
2009年8月現在,わが国では20疾患(ウイルス性12疾患,細菌性8疾患)に対するワクチンが認可されているが(表),このうち予防接種法に基づいた定期予防接種(以下,定期接種)に含まれる疾患は,ポリオ(急性灰白髄炎),麻疹,風疹,日本脳炎,インフルエンザ,百日咳,ジフテリア,破傷風,結核の9疾患のみである.
これら9疾患は一類疾病(インフルエンザ以外)と二類疾病(インフルエンザ)に分類され,前者には接種を受けるよう努める義務,いわゆる努力義務が課せられているが,後者には努力義務は課せられていない.接種費用については実費徴収可能となっているものの,一類疾病は予防接種実施主体である市町村あるいは特別区による全額負担の場合が多い.また,一類疾病の接種対象は小児であることから,対象年齢以外でワクチン接種を希望する者,および対象疾患以外に対するワクチン接種を希望する者は,任意接種により疾患を予防していることが現状である.任意接種の場合,一部の市町村あるいは特別区で費用負担があるものの,通常は被接種者(あるいはその保護者)の全額負担となる.
感染制御のための予防接種の目的の一つとして,感染症の流行を抑制することにより個々の感染・発症を予防するherd immunity(集団免疫)があり,これは前述の定期接種により効果がみられている疾患が多い.しかし,近年の流行の特徴として,従来,小児の疾患と考えられていた麻疹や百日咳が大人でも発生している.すなわち,小児期に予防接種を受けたが,免疫が獲得できていなかった者(primary vaccine failure)や,獲得した免疫が低下して発症した者(secondary vaccine failure)が存在することから,特に感染症に罹患する頻度が高い環境にある者,あるいは自身が周囲への感染源となった場合に周りへの影響が大きい者(例えば,医療機関に従事する者や小児との接触が多い職業の者など)においても,予防接種を受けることが感染制御のために非常に重要である.
本稿では,感染制御の観点から医療機関に従事する者(以下,医療従事者)において必要と考えられる予防接種の一部について述べる.
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