今月の表紙 臨床微生物検査・9
髄膜炎菌
加來 浩器
1
Koki KAKU
1
1東北大学大学院医学系研究科感染制御・検査診断学分野
pp.952-955
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101708
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
髄膜炎菌(Neisseria meningitides)は,淋菌(Neisseria gonorrhoeae)とともにグラム陰性双球菌であるナイセリアに属している.直径は0.6~0.8μmで,形態的には腎形ないしソラマメ形の球菌が2個並列した形をとっており,運動性はない(図1).
菌体表面には,線毛と莢膜を有している.線毛は,粘膜上皮細胞への定着に必要であるが,抗原変異を起こすことで免疫反応から逃れる働きを有する.莢膜は,好中球による貪食抵抗性に関係があり,新鮮分離株では観察しにくいが,抗血清の存在下で膨化反応を起こし確認しやすくなる.本菌は,この莢膜多糖体に対する抗原性の違いを利用して,本菌を13種(A,B,C,D,X,Y,Z,E,W-135,H,I,K,L)の血清型に分類されている1).臨床分離株の大部分は,A,B,C,Y,W-135の5群が占めていると言われている.A群は,アフリカ,アジア,ブラジル等において流行している株である.アフリカのサブサハラ地帯には,乾季(12月から6月)に髄膜炎菌感染症が流行する髄膜炎ベルト(meningitis belts)と言われている地域がある(図2).B群は米国,欧州,オーストラリアで,C群は米国,欧州,オーストラリアで優位な株である.W-135群は,メッカへの巡礼に関連した株として有名だが,近年では上記の髄膜炎ベルトでも確認されている2).
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.