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1.はじめに
輸血療法は,現時点において,代替のない必要不可欠な治療である.大量出血等で緊急性を優先した輸血療法が,夜間や休祝日の時間外に行われることもしばしば発生する.手術室での致死性の輸血過誤が多いこと1),重症患者における治療で予想以上に医療過誤が発生しやすい2)ことが指摘されている.したがって,24時間体制で質を保った迅速性と確実性が要求される.
輸血過誤,特にABO不適合輸血は,単純なヒューマンエラーが重篤な有害事象を招きうる医療過誤の典型的事例として取り上げられ,社会問題化している.迅速性が要求される場合でも,決して間違えることが許されない状況で,輸血検査技師(場合によっては薬剤師),看護師,医師は常に高度な注意力が要求されることとなる.特に時間外は,対応する人員が減少し,各個人に要求されるタスクがさらに増大する.しかしながら,ABO不適合輸血のような発生頻度の少ない間違えを防止するために常に注意力を持続することに対して,人は無力である3).医療従事者の記憶,注意力に過度に依存するプロセスに対しては,人の介在(human intervention)を可能な限り排除できるInformation Technology(IT)を導入することの重要性が指摘されている3).輸血過誤を防止するために,患者が被害に合わないように安全を保障するプロセスを組織的に設計し,間違うことが難しく,正しくすることがやさしいシステムの構築が要求される.手術室,ICU等で,緊急に大量に輸血を行う必要性が生じる場合には特に,Fail Safe/Fool Proof systemとして輸血システムのIT化は重要となる4).
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