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1. はじめに
わが国で更年期障害に対する治療が注目されるようになって10余年が経つ.それまでは「更年期」という言葉自体が女性性の喪失というマイナスのイメージが強く,ややもすれば女性を侮蔑する差別用語のようにも扱われてきた.しかし,わが国の女性の平均寿命は85.23歳〔2002年(平成14年)度の簡易生命表〕となり,1947年(昭和22年)の53.96歳と比べると30年以上も延びている.すなわち,閉経と人生の終焉がほぼ一致していた時代から,更年期は今や人生における1つの通過点であり,第二の人生のスタートであるという認識に変わりつつある.わが国においてはこの30年という短い期間に,社会環境,生活様式,価値観などの多くが,それ以前と比べて変化した.更年期障害が社会的にも認知され,また症状も多様化している背景には,こうした時代的変化の影響が大きく関与しているものと思われる.
更年期障害の治療には,症状発現の重要な因子である女性ホルモンの急激な低下を補うホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)が,最も理にかなった有効な方法とされている.しかし実際には,HRTが奏功しないケースも少なくない.その多くは抑うつ,イライラ,無気力といった精神神経症状を主として訴える患者であり,夫婦間や子供の問題のほか,生育歴,性格など様々な心理・社会的因子を併合1)している場合が多い.また,ほてり(hot flush)や発汗といった自律神経失調症状を強く訴え,一見HRTが非常に有効と思われる患者においてさえも,薬物療法だけでは十分な効果が得られないことがある.このように治療に難渋する症例は,カウンセリングが有効である場合が多い.
本稿では,更年期障害の治療におけるカウンセリングの位置付けと意義,およびカウンセリングを行う際の基本的姿勢について述べたい.
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