特集 病院医療—21世紀への遺産
21世紀のコメディカル
臨床心理士
大塚 義孝
1
1財団法人日本臨床心理士資格認定協会
pp.1072-1073
発行日 2000年12月1日
Published Date 2000/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903160
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近代心理学は物理学に示された19世紀以降の長足の進歩に触発されて,哲学の認識論から派生し発展した.近代科学として心理学も100年以上の歴史を経て今日に至っている.しかし奇妙なことに医療の世界でストレートに心理学が関与する事実は,極めて希薄であった.とりわけ日本では,その傾向が強かった.あえて上げるならば1905年にフランスの心理学者ビネー(Binet J,1857-1911)が,内科医シイモンと協力して世界で最初に考案した知能検査を発表したことである.これは今日の心理臨床家の心理測定技法の原点的業務ともなるものの創出であった.わが国ではアメリカと同時期の1908年(明治41年)に,既に東京大学の精神科教授三宅鉱一によって翻訳紹介されている.しかし残念ながら心理学会では無関心で,医学と臨床心理学の出会いというにはほど遠いものであった.
ことほど左様に,大ざっぱにいえば第二次世界大戦が終結する1945年まで,心理学界がまさに臨床心理学的実践家として医療界にコミットすることはほとんどなかった.ただ一つ注目すべきことは,アカデミックな埒外で,欧米業界も含め,精神科医療の異端ともいえる心理学的理解と治療技法の発明と発見を成就したフロイト(FreudS,1856-1939)の精神分析学の実践活動が始まったことである.
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