特集 病院経営戦略と企画部門の役割
病院の経営戦略策定のノウハウ
牧 健太郎
1
1監査法人太田昭和センチュリー医療福祉部
pp.662-664
発行日 2000年8月1日
Published Date 2000/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903053
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わが国の病院は,医療政策の庇護の下,受け身の姿勢でも従来は経営が成り立ってきたという一面がある.しかしながら,近年の医療機器の高額化や診療報酬制度改定,さらには医業への自由競争原理導入の方向性などの影響により,病院淘汰の時代がわが国にも訪れようとしている.病院が,地域社会などに対して良質な医療福祉サービスを提供するという本来の役割を今後とも果たしていくためには,継続的事業体としての経営基盤を自ら確立しなければならない.このような生き残り競争に勝ち抜くためには,経営者としての資質を持った病院トップと,明確なビジョンに裏付けられた経営戦略が不可欠だろう.
ここでいう戦略という用語は,戦術という用語とは意味合いが異なる.病院経営を取り巻く環境は刻々と変化していくが,そのような変化に対して逐一行動を起こしていたのでは,病院経営が混乱するだけであろう.経営者は,周囲で発生した環境の変化を恒久的変化と一時的変化とに識別し,それぞれに対して適切な対応をとる必要がある.恒久的変化に対する手段が戦略であり,また,一時的変化に対する手段が戦術である.すなわち,変化する環境に適応していくためには,短期的動向にとらわれることなく,長期的動向に対応するために貫徹させるものを持たなければならないのである.このような意味で貫徹されるものが戦略であり,短期的動向への対応手段である戦術とははっきりと区別される概念である.
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