グラフ
老人病院から出発,医療・福祉の包括的サービスを志向する—医療法人渓仁会グループ
pp.409-414
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901222
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Sさんの笑顔を引きだした札幌市手稲区の地域ボランティア活動
浦河町で暮らしていたSさん(現在57歳)は4年前の交通事故で夫と長男を失い,同乗していた自分にも左半身麻痺,歩行障害の後遺症が残った.病院を退院後,札幌に住む息子夫婦と同居.しかし,共働きの夫婦が朝出勤したあと,子どもたちを保育園から連れて戻ってくる夕方まで,Sさんはマンションの自室で独りだけの時間を送らなければならなかった.事故のショックに加え,不自由な身体で友人もいない札幌での不慣れな生活.2年半つづいたそんな生活に転機が訪れたのは,Sさんが手稲区役所にかけた電話がきっかけだった.
区報で電動ベッドのレンタルモニターを募集する記事が目にとまり区役所に連絡したところ,訪ねてきた保健婦がSさんに,話し相手となる在宅ボランティアの派遣を提案,月1回の保健婦の訪問と,昨年9月22日からはボランティアによる週1回の訪問が始まった.事故や自分の障害を受け入れられないまま悶々とした日を送っていたSさんは,訪問を開始した当初涙もろく,人生を後ろ向きにとらえる姿勢が目立った.しかし,ボランティア3人がチームを組み訪問を重ねていくにつれて明るさを取り戻し始め,この頃では,以前には滅多に見せなかった笑顔も見られるようになった.
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