特集 地域づくりのために病院に何ができるか
地域づくりの実践
日南病院と地域づくり
安東 良博
1
1日南町国民健康保険日南病院
pp.36-38
発行日 1993年1月1日
Published Date 1993/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900263
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日南町は,鳥取県の最西南端に位置し,島根県,広島県,岡山県の県境に接する中国山地にある.面積は県下39市町村最大の10%を占めるが,山林が90%を占め耕地は5.4%にしかすぎない.冬季の積雪期間が長く積雪量も多い.人口はかつては16,000人を越えたが平成3年10月1日時点で,8,242人と半減し高齢化率は27%となっている.人口ピラミッドはきのこ型を示し,過疎と高齢化の著しい町である.町民は様々な不安や悩みを抱いて生活しているが,その最大のものは老後の不安であろう.過疎と高齢化の2つのマイナスイメージで語られる地域こそ,心豊かな長寿社会をめざして,地域全体で努力することが必要になって来た.「心豊かな」とは高齢者のQOLが保障されているということであろう.人生の終わりをどのように生き,どのように死ぬか,換言すれば人間らしく生き,人間らしく死ぬことが保障されている社会が,心豊かな長寿社会といえる.高齢者が今まで暮らしてきた地域や家を捨てなくてもよいように安心して家庭生活ができるように,地域医療の充実は最も大切な課題である.人口過疎と高齢化のうえに,さらに地域医療過疎を加えてはならない.
地域医療という場合,それは単なる地域の医療という意味ではなくて,地域住民の疾病予防,健康づくり,治療,リハビリ,在宅ケアなどのすべてを含んだ包括医療を意味する.
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