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■はじめに
日本の総人口は,第二次世界大戦で一時的に減少した時代はあったものの,明治維新以降,急激な増加を続けてきた.一方,戦後の人口増加は,平均寿命の急激な伸長に伴う見かけ上の人口増加と言える.いわゆる「団塊世代」と言われる終戦直後の合計特殊出生率は4.0を超えていた.その後,1975年には,合計特殊出生率は人口維持に必要とされる値(2.06〜2.07)を割込む2.0以下となり,さらに2005年には1.26と過去最低を記録した.近年は1.3台で推移しているが,2022年は新型コロナ感染症の影響もあり,合計特殊出生数が全国で80万人(出生率1.27)を切ることとなった.中長期的な視点では,これらは明らかに人口(生産人口)の減少となり,国の将来に大きな影響を与えることになる.人口減少と相反し,平均寿命は男性が81.47歳,女性が87.57歳(2021年)で過去最高を更新した.戦後の平均寿命が50歳台であったことを考慮すると飛躍的な伸びである.つまり,事実上の人口(生産者人口)の減少を寿命の延長がマスキングしてきたことになる.これらの推移の結果,日本の人口は2008年に約1億2800万人のピークを迎えて以降,減少に転じており,その時点における高齢化率は22.1%であった.現在は,人口約1億2500万人,高齢化率は29.1%となっている.
また,都道府県別の人口移動数注1を見ると,2021年および2022年においては,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響に伴い,リモートワークといった勤務形態の変化,または地方への移住などが要因となり,東京都への転入数が転出数を下回る状況となった.一方,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,山梨県といった首都圏においては,転入数が超過となっている.さらには,東京都の人口移動が限定的な要因であることを鑑みても,依然として首都圏一極集中が進んでいることが分かる.
つまりは,多くの地域では少子高齢化・人口減少が進み,人・物・金の首都圏への一極集中が進んでいる.このような日本において,社会基盤(インフラストラクチャー)の一つである医療・介護・福祉サービスに対する今後の取り組みや方向性を考察する.
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