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■自治体病院の責務
地方公営企業法の適用を受ける公立病院は2020(令和2)年で853病院と,2008(平成20)年の943病院に比べ1割,90病院減少している.総務省の従来の公立病院改革ガイドライン(GL)に従い,地域の人口動態や政治・経済的動向などによって医療体制が見直され,再編・統合,廃止などが行われたためと考える.自治体病院の65%は人口10万人以下の地域に,30%は3万人未満の地域に存在しており,国の政策や地域の変化に強く影響される.自治体病院が果たすべき役割に,へき地医療,不採算医療,政策的医療,高度先進的医療などが挙げられているが,基本となる一般医療が円滑に行われなくては,病院としての維持・存続は叶わない.われわれは,地域住民が必要とする医療を安全に,公平に,効率的に提供することを理念とし,医療のプロ,公務員としての誇りを持ちながら,地域に密着し最後の砦としての役割を果たすことを責務としている.
大都市圏では人口増加,高齢者増が続き,地方では人口減,地域の縮小・衰退が圏域ごとにさまざまな形で進行しており,憂慮すべき事態が続いている.このような状況下,自治体病院は圏域内での自院の役割を明確化し,地域への貢献を一層推進することが必要と考えている.公民全ての関係者が一体となって,地域医療構想に沿って最適な医療体制を構築し,機能分担,連携体制を築き,有用性の高い医療情報システム(医療DX)を導入,かかりつけ医機能,地域包括ケアシステムなどの稼働を目指すべきと考えている.そのためには人口の集中した(大)都会型の医療政策のみではなく,診療所すら撤退の進む地方にも光の当たる社会保障,国民皆保険制度,診療報酬制度であってほしいと願っている.
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