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■日帰り手術を可能にする変革
北米において定額払い制度が部分的に導入された1983年,日帰り手術が爆発的に広がり,数年後には市場も飽和状態となった.医療の歴史の中では,瞬間のエポックに過ぎないであろうが,この日帰り手術のシステムの成立にはさまざまな意識改革を伴った非常に大きなエネルギーを要したことも事実である.医療経済と病院経営だけを考える患者不在の医療はあり得ないことは,サービス業である医療にとっては当然のことである.そして十分な情報提供の下に,インフォームド・コンセントが行われ,患者の選択の自由や自己決定権が尊重される一方で,患者の自己責任が求められる時代でもある.このような今日の医療の流れを変えていくことはもはや誰にもできないだろうと思われる.しかしながら,時代の流れを変えることはできなくても,医療がサービス業であることが認識され,競争原理が導入されていく中で,その先頭に立っていくことは可能である.
そのために必要なことは,患者中心主義を軸とした医療従事者の意識改革,病院の機能的・構造的改革などのイノベーションである.医療従事者の意識の変化が求められ,そして治療を受ける側の意識が変わった.マーケティング手法を用いた未来型戦略型の発想なしではこういった時代に適応できなくなってきた.いかにニーズを探り出し,それらに対応していくか,さらにニーズをいかに創造していくかがこれからの医療者に求められ続ける姿勢であろう.湘南鎌倉総合病院の日帰り手術システム(DS)には,これからの時代の流れに対するイノベーションが凝縮されているといっても過言でないだろう.このシステムが価値あるものとして成長していくことを確信している.
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