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醫學の進歩に伴う治療形態の變化
Y T
pp.28
発行日 1949年12月1日
Published Date 1949/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210238
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クロロマイセチン
抗生物剤はペニシリン以来おびただしい数のものが発見せられたが,クロロマイセチンはその中でも特筆に値するものである。これはペニシリンの無效な疾病の数々に驚異的な治效を奏する,ある種の土壌菌から得た抗生物質であって,臨床実験報告によれば,腸チフス,発疹チフス,恙虫病に対しては,100%の治病率を示し,これを用いた患者は一人も死んだ者がなく,しかも悉く数日以内に熱が下って治癒に向うということである。なお本剤は他の抗生物剤とちがって注射だけでなく経口的に内服もできることが著しい特長で,これが広く用いられるようになると,世界に於ける疾病治療上一大改革がもたらされるであろうと言われていたが,最近の報道によれば,米国のPark Davis製薬会社の若い1人の女科学者が,遂にこのクロロマイセチンの合成に成功し,今後はこの薬を大量に且つ安価に供給することができるようになったということである。最近までは米国でも本品の入手はかなり困難であったときいていたが,合成品が出廻るようになれば,わが国に大量に輸入されるのも間近いことと期待される。
ちなみに本劑は,上記の腸チフスやリケッチアに因る疾病の他,鸚鵡病及び第四性病などのヴィールス病や波状熱並に百日咳にもよく奏效するし,またコレラ,ペスト,赤痢にも有效であろうと考えられている。
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