検証・日本医療の論点
医師所得は高すぎるか?—1980年代の医師所得変化の実証的研究——①
二木 立
1
Ryu NIKI
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.536-543
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209589
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●はじめに
近年,医療費抑制・病院経営悪化あるいは税制改革との関連で,医師の高所得に対する関心・批判が改めて高まっている.中医協「医療経済実態調査」の結果が発表されるたびに,開業医の一般勤労者に対する高所得ぶりがマスコミを賑わすだけでなく,最近は厚生省サイドから,病院経営悪化の主因は勤務医の高給与であるとの新たな主張もなされるようになっている.
筆者は,わが国の医師の高所得は1960年代の医師不足時代に生じた歴史的現象であり,今後の「医師過剰時代」の到来に伴い,医師の所得水準が低下することは避けらないと考えており,5年前の本誌上では,2000年以降の医師所得の「均衡レベル」を,①勤務医の給与水準は一般勤労者の2倍,②開業医と勤務医の所得格差は1.5倍と予測してもいる1).
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