病院職員の基礎知識 診療科の知識
耳鼻咽喉科
犬山 征夫
1
Yukio INUYAMA
1
1慶応義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.708
発行日 1983年8月1日
Published Date 1983/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208093
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耳鼻咽喉科の歴史
古代エジプトにおいては,ある者は身体の一部のみを診療し,またある者はただ一つの疾患のみを取り扱うという最も狭い意味での専門医が存在していたようである.しかしいわゆる専門医が発達してきたのは比較的近世になってからである.すなわち18世紀ごろより分科の傾向が起こり,まず眼科医が現れ,次いで産科,婦人科,耳科などの各専門医が登場した.一方,喉頭科医は耳科医よりかなり遅れて登場した.その発展の過程をみても耳科医は手術に習熟した外科医であったのに対し,喉頭科医は胸部知識に詳しい内科医であった.喉頭科学はもともと喉頭のほかに咽頭の研究を含んでいたため,その後,鼻科学の研究を含むまでに発展した.このように耳科学と喉頭科学は別々に発展してきた学問であったが鼻科学が両者の橋渡しとなり,今世紀に入ってから耳喉頭科学に統一されることになった.そして今日ではより正確なかつ総合的な「耳鼻咽喉科学」という名称が広く一般に認められ,用いられている.因みに現在の我が国の耳鼻咽喉科医は気管支鏡や食道鏡検査にも習熟しているため,実際の診療においては気管食道科も取り扱っている.
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