特別寄稿
イギリス及び西ドイツの医療計画—我が国との保健医療体制の比較
石野 誠
1
Makoto ISHINO
1
1厚生省
pp.138-143
発行日 1983年2月1日
Published Date 1983/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207952
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近年わが国においても医療費の問題がマスコミを賑わすようになり関心が高まってきているようにみえる.しかし,この関心というよりむしろ憂慮は財政当局及び有識者の間であり,国民全体の問題としての意識の盛り上がりはまだそれほどでもないように思われる.実際,現在各種の医療保険の財政状態は悪化しており,例えば政府管掌健康保険や日雇労働者健康保険は多額の累積赤字を抱えている.また国民健康保険は被保険者の所得水準が比較的低いこと及び加入者に占める70歳以上の老人の割合が8.5%にのぼることなどから,保険料のみでは収支を合わせることは困難で,多額の国庫補助で収支を合わせている現状にあり,当然のことながら財政当局の関心は強く,今後人口構造の老齢化が急速に進む中で保険財政の建て直しのためになんらかの手が打たれねばならないことは明白である.老人保健法のねらいもここにある.(表1〜4)
人口の老齢化が進んでいる先進工業国においては,すでに医療費の問題が表面化しており,それに対して種々の医療費抑制策がこれまで打ち出されてきている.その方策としては,社会保険制度の国々においてはまず財源確保,つまり保険料率の引き上げを行い,また各種保険制度間の財政調整を行っている.
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