病院管理の工夫
北病院の運営管理
山本 良夫
1
1北病院
pp.436-437
発行日 1982年5月1日
Published Date 1982/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207744
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住民運動で生まれた病院—住民立病院—
当院は昭和49年11月,東京北区の東十条という過密な都市の中に,地域住民と労働者,医療従事者の健康を守り,よい医療を目指す統一運動の力で設立され,8年目に入っている.当時は政府の高度経済成長政策,新全国総合開発計画などにより,労働と生活がきびしくなり,生活環境の破壊もその極に達して,公害病,労災職業病,ストレスによる成人病(糖尿病,脳卒中,心臓病)・がん・精神障害などが急増している時期であり,また,救急のたらい回し事件なども連日のように報道されていた.一方,北区の住民は工場の悪臭をなくす運動,建築公害,新幹線公害反対運動,老人医療費無料化と検診の充実,乳幼児医療費無料化や医療を良くする会の活動などを展開し,健康を守り,病気を未然に防止することの意義を深く理解する運動の歴史を積み重ねてきていた.
19年間にわたり,住民と共にこのような諸運動の先頭に立って闘ってきた住田幸治院長は,広く区民に対し,日進月歩の医学の成果を反映し,疾病構造の変化に対応し,なによりも患者の立場に立つ水準の高い総合的・人間的医療を実践する区民の医療センターとしての総合病院設立運動の呼びかけを行った.土地も金もなく,ただ構想だけがみんなの智恵の結晶としてある"幻の病院"は,院長の呼びかけに応え,支持する人々の連鎖的運動の広がりにより,日々現実的なものとなっていった.
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