バイオエシックスと医療
5.バイオエシックスの考え方(その2)— 1)情報の共有
木村 利人
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1ジョージタウン大学バイオエシックス研究センター
pp.428-429
発行日 1982年5月1日
Published Date 1982/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207740
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バイオエシックスは「生命」,「医療」に関する事柄について,当事者と関係者の「人権」を尊重する立場から,ある一定のプロセスや安全確保のためのシステムづくりに貢献してきました.この場合,生物・医科学研究や臨床の現場,更に直接に利害関係を持つコミュニティ(諸施設の建造などに関連して)の中で,研究の対象となる人,患者,地域住民などと専門家との間に,どれだけ正しい情報が共有されているかが重要なポイントです(Informed Consentの論理の展開がPublic InformedConsentという形で,医療の分野からDNA産業などの先端科学技術研究と地域住民の対応へと援用されていった.これについてはSouthernCalifornia Law Review, Vol.51,No.6, 1978参照).
医療における患者と医師の関係のコンテキストで言えば,診断についての医学的情報が正しく当事者(近親者を含む場合もある)に伝えられ,理解されなければなりません(本誌41巻1号「バイオエシックスと医療」参照).それは,当然のこととして「医療の論理」とは全く異なった構造を持つ患者の「価値観」や「倫理意識」についての情報が医療従事者と共有されているかどうかが,「医療行為」それ自体にもある意味で大きな影響を与えるからです.
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