随想
私の医学とゴムひも
見元 良平
1
1高知見元病院
pp.1063
発行日 1981年12月1日
Published Date 1981/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207633
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健康とは,病気とは,医学とはなど何ひとつ分からず,医学は神の創造に仕える芸術だと教えられ思い込んで,他になんの才能もないままに,医師になってしまった.
大学を終わると間もなく軍隊に召集され,満州より南支に至る軍旅の年月,戦闘,捕虜収容所などの体験は,私の医学の基礎を形成するとともに進歩をもたらしてくれた.零下30度の酷寒と35度を超す炎暑,氷雪と長雨,乾燥と湿潤など異なり変化する気候風土に対する人体の反応,戦闘中の緊張の続く日々の人人,行軍に疲れ果て小さい紙片さえも取り去り棄てる行動,捕虜収容所の飢餓状況下の心身の状況など,動物実験では何も教えてくれないものを知ることができた.軍隊生活のおかげで,机上や紙上でなくプライマリケア,健康であるということはどんなことであるかということを感じ取り,マラリヤ,アメーバ赤痢罹患などで更に教えられたのである.
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