随想
早春
鈴木 辰四郎
1
1長野赤十字病院
pp.235
発行日 1981年3月1日
Published Date 1981/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207411
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北信濃の春は遅いと言われているが,春の兆しは早くから現れはじめている.
12月22日は冬至であるが,この日は一年中でいちばん短い日である.冬至を境にして昼間が伸びてくるが,昔の人はそのことを畳の目がひとつずつ伸びてゆくと表現した.極めて徐々にではあるが昼間の伸びてゆくことはわかる.しばらくの間そのことは気付かれないほどであるが,新しい年が明ける頃になるとだれの目にもわかるほどになる.今までは南の空に低かった太陽も,いつしか頭上高く明るさを増して,物の象(かたち)も一段と鮮明に映るようになる.厳しい寒気の中にも春の気配が,そこはかとなく感ぜられるのである.
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