医療への提言・11
新医療経済学への道
水野 肇
pp.44-47
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206225
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理論経済学では片づかない医療
「医療」は,長い間,経済学的なアプローチのむずかしいもの,あるいは不可能なものと考えられてきた.その理由はいろいろとあげられているが,ひとつは経済学の主流を占めてきた「理論経済学」のワクからはみでたものだということがあげられよう.理論経済学には,ケインズやマルクスからはみだしたものは対象外とする"ヘキ"のようなものがあるが,医療は理論経済学からみる限り,得体の知れない要素があって,ワク組みの中には到底入れることができないと学者の眼にうつったのも当然だろう.とくに計量化できないということにひとつの大きな難点があったことも事実である.
もうひとつの面は,医療にはコマーシャル・ベースで律し切れない面があることである.たとえば,医師がX線の機器を購入したとして,この機器の耐用年数が10年とする.だとすれば最大限,10年間に減価消却をすればいい.仮にその半分の5年間で消却するとして,3年目になったときに,さきに購入したX線の機器とは,性能のうえで比較にならないぐらい優秀な機器が開発されたとする.しかし,まだ減価消却どころか,3年もたっていない.こういう場合,一般の企業なら,新型の機械が生産性の向上に飛躍的につながるとか,その他の理由で,その時点で買い替えても,十分採算に合う場合にしか買い替えないのがふつうである.
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