病院と統計
医療産業
石原 信吾
pp.10-11
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205173
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よく,需要が供給を生むのか,供給が需要を生むのかという議論がされることがある.最近,いわゆる‘医療産業’なるものが盛んになり,各方面の注目を浴びるようになってから,そこでもやはりこの同じ議論をしばしば聞く.その場合,供給側である医療産業がリードし,医療機関がそれに追随しているというのが大方の意見らしい.なかには,医療機関が医療産業のくいものにされているという見方さえある.医師は薬のメーカーの宣伝に踊らされて薬を多用しているという議論などもその例である.そうした議論を裏づける事実もたしかにあろう.しかし,もっと深くつっこんでみて,すべてがそうだと言い切れるかどうか.問題はそんなに簡単ではないように思われる.
供給を真に誘発するものは,実は社会のニードではなかろうか.需要もまた,その同じニードに誘発されて生まれる.‘よい医療を得たい’という社会的ニードがあればこそ,それに応えるために高度の医療機器や卓効をもつ新薬が開発されることになる.また,医療機関側もその社会的ニードに応えるための新鋭武器としてそれを取り入れる.供給と需要の発生の根源がともに社会的ニードにあるという実体認識は誤ってはならない.
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