特集 火災対策
火災時の心理
安倍 北夫
1,2
1東京外語大・災害心理学
2東京都火災予防審議会
pp.44-48
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205126
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火災習慣をあらためる
近頃どうも火災の様子がおかしいということを感じられないだろうか.火災件数に比較しての死者の数が顕著にふえている.焼死者に対して煙死者が増加している.一口に煙死者というが,その中には,これまで常識であった一酸化炭素中毒ではないものが増加している.2階3階といった高層の建物の場合でも,火災の直上階が一番危険と考えられていたのに,最上階で真先に死者が出る.耐火構造だから火事に安全と単純に信じられていたのに,高層のそれこそ堂々たる鉄筋ビルで多数の死者が出る.こうした事情は,これまで火災についての常識と考えられていたものや,それに基づいてできあがり,無意識のうちに人びとの間にうけつがれてきた,いわゆる火災習慣なるものを再検討しなければならぬことを示唆しているように思われる.
大体これまでの火災習慣なるものは,それこそ木と紙でできた木造建築の,それも平屋についてのそれであったようである.だから,それ火事だといえば,人びとはとるものもとりあえず,そのまま外へハダシでとび出せばよかった.
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