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—Carol Taylor著—"in horizontal orbit—hospitals and the cult of efficiency (病院における水平思考—病院と能率主義)"
姉崎 正平
1
1病院管理研究所
pp.86
発行日 1973年2月1日
Published Date 1973/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204918
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病院管理における官僚主義的垂直構造の解明
この本の題をあえて直訳すれば"水平軌道において——病院と能率崇拝"となる.この題の中の‘水平軌道(horizontal orbit)’という字句が,ひところベストセラーになったデボノ博士の‘水平思考’を連想させ,興味をそそられページをめくっていくと,病院関係者や世間一般の人々が,あまりにも慣れ,あるいは慣(馴)らされすぎて常識化している病院内あるいは病院と地域社会の関係における‘しきたり’や制度に対する女流社会(人類)学者特有の丹念な観察と手際よい理論的整理に,少なからずハッとさせられる.この点では,先ごろ,わが国で公開され,たくみに病院に対する常識の裏をかき,観衆に衝撃を与えたアメリカのスリラー映画‘病院(The Ho—spital)’の幾つかのエピソードがオーバーラップしてくる.
入院の中で‘水平’に寝かされている患者にとって,めんくらい困惑するのは,‘水平的体位’ではなく,むしろ,病院組織の拡大や医療技術の発達により導入された能率的管理のための官僚主義的‘垂直’構造すなわち縦の権威であり,また,横の連絡・協力の悪さである.
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