検査室の窓から・6
自動化検査機器の導入
冨田 重良
1
1県立尼崎病院研究検査部
pp.74-75
発行日 1972年6月1日
Published Date 1972/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204691
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病院における臨床検査件数の急激な増加に伴って,オートアナライザーなど高価な自動化検査機器の導入が流行となってきたように思われる.人件費の急増に悩む管理者側ではその導入によって検査室の人員増を押さえようと企て,一方わが国の工業界でも,その将来性に期待し,こぞって研究・開発に手をつけておられるようである.
しかし,低医療費の制約下に悪戦苦闘を強いられている私どもの立場からこの傾向をながめるとき,何やら危険な感じがしてならない.まず第1にその値段が医療費の現状に比して高すぎるように思われる.‘親方日の丸’的な安易な考え方で,これらの高価な機器を導入するならば,かえって病院の経営を苦しくするのではなかろうか.メーカー側では‘検査を何件すれば採算がとれますよ’と甘いことばでささやきかける.しかし,これらの検査による利益が低い医療技術料による赤字のカバーにあてられている現状では,その採算の悪化はたちまち病院の赤字増に結びつくのである.‘検査収入はふえても機器の購入,償却に追われて病院の台所は苦しくなるばかり.メーカーが喜ぶ反面,技術者数のふやしてもらえない検査室や,総医療費急増を口実に技術料を低く押さえられた病院はともに泣く’,といった第2の薬禍を演じはしまいかと心配になる.
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