病院経営戦前戦後・6
医師の俸給
山元 昌之
pp.64
発行日 1970年6月1日
Published Date 1970/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203991
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"医師の技術料"ということばが目につくようになってから,何年たつだろうか.今日では,この用語が一般に熟してきたように思われる.‘医術’ということばは古くからある.これは通常,‘医学・医術’というように用いられ,‘医師が医学を実地に施用する’ことを意味する.‘技術とは理論を実地に応用する手段’のことだから,その意味では,医術は医学を実地に応用する手段だから,技術には違いない.
しかし元来,医療は医師と患者との信頼関係の上に成り立つものだから,医術は単なる技術ではない.これは‘医は仁術’の術であって,‘人間愛を基盤として医学を実地に施用すること’を意味する.‘医師の技術料’ということばは,具体的には,医師の行なう診察・治療など医師の医行為に対する報酬のことだが,この技術料ということばは,医の本質たる人間愛の基盤を無視した香りが強く,まことに危険な用語である.日本語は,文字そのものが意味を持っているので,このような用語については特に慎重であってほしい.
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