特集 大学と病院
大学病院の院長—専任院長問題
篠田 糺
1
1岩手医科大学
pp.21-25
発行日 1966年9月1日
Published Date 1966/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202921
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1.専任院長制
日本の国立大学病院(したがって公私立の大学病院)には,なぜ専任の院長をおかないのだろうか?教育機関の一部だとはいいながらこれほど大きい複雑な組織で多種多様の職種を擁し,年間10億ないし20億の予算を使い,教育と研究と診療との3大使命を担い,臨床医学発展の基礎であり,模範であり,すべての医師を養成する任務を帯びている大学病院が,同時に現業と同じように診療をしているのであるから,専任の院長がおかれても,少しもふしぎではない。それなのに今なお教授の併任で,しかもたいてい2年交替制であることのほうが,むしろふしぎである(大学以外の人は専任だと思っている)。
ことに戦後は赤字経営つづきのため,施設の改善は遅々として進まず,臨床教育上の問題や,診療行政上にも,運営の制度上にも,さまざまの問題が多発しているにもかかわらず,根本解決の見通しが立たないでいるのに専任院長どころか副院長制度さえも,考えられていないのは何故だろうか?大学病院長経験者なら誰でも,明治,大正時代からの歴史的伝統だからと観念することなく,もっと積極的に新時代に対応して発展させるために,私と同じ疑問と発想をもつことであろう。
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