病院管理講座 実務編・12
病院薬局管理の実際(Ⅱ)
上野 高正
1
1虎の門病院薬局
pp.79-84
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202280
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薬局の合理化について
近来薬局業務の合理化ということばが,さかんに言われるようになった。現在のわが国の病院には合理化されねばならない面がたくさんあって,むしろ薬局以外の部門の方が多いとは思われるが,薬局についてもその努力が必要であることは疑えない。元来合理化なる言薬は,合理性をつくらぬことであるわけで,決して出来上がりの簡略化ではない。いわば管理の強化である。薬局の管理そのものが,独特の専門的知識がないと出来ないために,医師からも事務職からもおきざりにされ,それにもまして薬局当事者の意慾の不足のために,病院管理学が薬局部門をのこして発達してしまっているが,病院薬局管理学も漸くに発達の緒につき,日本薬学大会にも昭和38年の第17回大会から部会をもつまでになった。
薬局の合理化がさけばれるようになった直接の原因の一つには,病院への外来患者の殺到と医薬品の進歩から,処方箋発行率の増大,投薬日数の増加がおこり,そこに病院薬局の人員,施設,設備との不均衡をおこしたことがあると思われる。まことに残念なことに,わが国の現状は,この不均衡を調剤を始めとする薬局業務の質の低下により解決している状態にある。すなわち品質の低下にも誤りの増大にも眼をつぶって,ただ数をこなすことだけにひたすら邁進している傾向にあり,結局は患者にしわよせが行つているが,患者が素人であるために,それに気がついていないだけである。またそれだけに罪が深い。
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