特集 看護
精神病看護の経験
羽生 りつ
1
1国立武蔵療養所
pp.585-587
発行日 1958年7月1日
Published Date 1958/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201387
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精神科看護の実習に来る看護学生達と実習の最後の日に何時も懇談会をもつているが,その際ある学生が「患者の入浴介補をして,始めて男子患者の背中を流したり,着物を着せたりしたが,全員の入浴が終る頃,自分の抱いていた精神病患者に対する考えがまちがつているのに気付いた。裸の人間をお世話してみて,いわゆる気ちがい,と云われているものに対しての恐怖が除かれ,やつぱり一人の人間だということが心の底にしみこむように理解されてきた」と,またある学生は「精神病患者というものに対して,教室で教わつたなかで,特に甚だしい症状が印象に残つていたので,実習1日目は恐怖心でびくびくしていたが2日目に看護婦から患者のそばにいくようにさそわれて,おそるおそる話しかけてみたら,患者の方から「貴女達の口調は僕たちを精神病扱いにした口のきき方だ,失礼だ」と云われて,内心おおいに恥じ,またちがつたおそれを感じた」等,学生たちにとつては意外だつた経験談が多く語られた。私共では毎年数カ所の高等看護学院の臨床実習指導をお引受けしているが,その際いつも感じることは精神障害者に対する認識がいかに欠けているか,また精神病院は陰惨な暗い所だと印象づけられているということである。然し2週間の実習が終つて帰る学生の多くは,自分達が如何に精神障害者の実態をしらなかつたかということ,また患者との対人関係が如何に大切で,また困難かということを痛感しているようである。
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