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お詑びの手紙—病院内規をつくつてないわけ
原 素行
1
1都立廣尾病院
pp.21-22
発行日 1953年12月1日
Published Date 1953/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200737
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折角私共の病院内視を「病院」に掲載して下さるという事は誠に光栄に存じますが,生憎私共の処には内規が出来ていませんし,又今の処これを作ろうとも考えて居りません。このようなわけで内規のことは御勘弁を願います。
但し,いつの日かには「病院各部門の職員の心得」のような規定ではない物を作ることがあるかも知れませんが,それには非常に慎重な用心が必要であると思います。規定をつくる事はホントウにむつかしいと思います。患者を預つて其の生活のお世話をする病院としては一歩間違えば大変なことになる恐れがあるからです。例えば書き洩した事項があつたとしたら動きのつかないことになりましようし,時には抜け道を探して己の任務ではないという人があつたらどうにも裁きのつかない場合も起ると思います。ズーツと以前のことですが,私も危くそんな目に遭いかけましたので,内規をつくる事を断念して遂に職業上の道徳観念ということを張調して「不文律」としたことがあります。そのためにお役所の規定には「他の部門に屬しない事項」という仕事の割り当てを受ける課や係が生じて来るのでありますが,それでは内規を作つて病院各部門の運用を円滑且つ高能率にすることは到底無理ではないでしようか。機構が出来ると屡々抜け道を堂々と歩む人が出て参ります。
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