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病院經營の本質と經理の目標—病院経理に理論を与えよ
山元 昌之
1
1滋賀大学事務局
pp.3-7
発行日 1950年5月1日
Published Date 1950/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541200135
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I
従来日本の医療制度は所謂開業医制度であつた。この開業医制度がいろいろの欠陥を露呈するようになつて,10数年来,種々改善策が講ぜられ,旧医師法が廃止されたり,又戦後には医療法や新医師法が制定されたり,更にアメリカ社会保障制度調査団やアメリカ医師会調査団の観告を見たりするようになつてきた。何れも医業経営をその本質に沿うものにしようと云う考えである。我我が病院経理の主目標を何処におくべきか,を考えるに当つては,まず病院経営の本質が何であるか,と云うことを明確に認識して,その上で結論を出すのが正しいと思う。そこで病院経営の本質を抽象的に,直に掲げることは容易であるかも知れないが,現在の開業医制度も結局は1つの歴史的所産である。それが欠陥を生じたと云うのは社会進化に追従せない面が大きく行われてきたと見るか,或は医療制度自体が社会制度の1部分であるから,社会制度の変革に応じて変革されるべき運命にあるものと見てもよい,更に唯物弁證法的な説明もできよう。どの説明をとるにしても,開業医制度が社会進化の一定の発展段階に於ける必然の産物であつたと云うことは間違がない。そこでこの医療制度発達の歴史を辿つてみると病院経営の本質がよく理解される。
今我国医療制度の発達史をこゝに詳細に取扱うだけの準備もないが,極めて簡単な素描を試みてみよう。
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