連載 病院が変わるアフリカの今・5
マダガスカルで芽吹く患者中心の医療
池田 憲昭
1
1独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際医療協力部
pp.342-343
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102258
- 有料閲覧
- 文献概要
政治経済危機のマダガスカル
マダガスカルは貧しい国である.1990年代の1人当たり国民総生産は250ドル程度であり,国民の半数以上が生存に必要な最低限の栄養を維持できるライン(貧困線)を下回る生活を送っていた.2008年,長年にわたる国民の不満の鬱積を見越したように,首都アンタナナリヴォ市長であったアンドリー・ラジョリナが軍の支持を受けてクーデターを起こし,2009年に暫定政府が発足した.しかし,わが国を含め多くの国が正式な政府として認めないために開発支援が滞り,国民生活はますます不安定になっている.
国が直営する公的病院の運営予算でさえ年々削減されてきている状況で,保健医療サービスへのアクセスが悪い地方の貧困家庭では,乳幼児と妊産婦の死亡率が高い.とりわけ子どもたちの栄養状態は深刻であり,マラリアなどの治療可能な感染症の致死率も高くなってしまう.このような政治経済危機下において,マダガスカルの保健行政担当者と医療従事者は国民の命を貧富の差なく,公平に守るために苦渋を強いられている.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.