連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第107回
米国ヘルスケア建築を取り巻く潮流
アリソン デイヴィッド
1
,
岡 ゆかり
1,2
1サウスカロライナ州立クレムソン大学
2東京大学大学院工学系研究科
pp.794-799
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100691
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1990年代の流れ
昨今の米国ヘルスケア建築を取り巻く潮流として大きなものに,運営効率の向上,患者・家族そしてスタッフの満足度改善,そして治療効果に直接貢献する環境づくりの三つが挙げられる.この流れの背景には,膨れ上がる医療費の抑制,充実した保険プランに加入者している人々へのアピール,人数の不足のみならず,高年齢化してきている看護師の離職を引き止めることなどがあり,これらの理由抜きには語れない.
1990年代初頭からのキーワードとして患者中心ケア,コミュニティ基盤の健康増進,代替医療,ウェルネス志向,通院医療への移行,ブティックヘルスサービスとよばれる快適性や利便性をプラスアルファしたサービス,スタッフ不足などが医療を取り巻く分野で口にされるようになった.今日の状況は,基本的にこの流れの先にあるが,例えば「患者中心ケア」は「患者・家族中心ケア」に取って代わるようになった.医療機関は,患者自身のみならず家族の体験がヘルスケアマーケットを左右するだけでなく,患者の回復にも少なからず影響することに気づき始めたからである.もとはといえば,周産期・小児医療の分野が発端となったこの潮流,今では病院の全診療科を巻き込む勢いである.
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