特別寄稿
イギリス・ブレア政権の高齢者介護・福祉政策(上)
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.223-226
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100576
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イギリスは,かつて「ゆりかごから墓場まで」のスローガンとともに福祉国家として知られていた.しかし,サッチャーら保守党の18年に及ぶ長期政権の間に行われた改革以降,もはや福祉先進国というイメージを持つ人は少ないであろう.しかし,そのことは日本にとって学ぶ点がなくなったことを意味しない.なぜなら北欧など福祉先進国は,社会保障給付費の水準がわが国のおよそ3倍,人口規模は2けた小さいなど,わが国との違いが大きすぎる.一方,イギリスは日本と同様に,中~低負担で実現可能な効率的な福祉を追求しており,人口も日本のおよそ半分なので,むしろ現実的改革のヒントが学べる可能性があるからである.
例えば,介護保険制度で導入された介護サービスへの民間企業の参入も,ケアマネジメントも,わが国より早く導入していたイギリスに学んだとも言える.2003年度から導入される障害者支援費制度も,その一つのモデルをイギリスの費用直接支払い(direct payment)方式に求めることができる.
このように考えると,イギリスにおける高齢者介護・福祉政策の流れを学ぶことは,中~低負担の効率的な福祉制度が直面する問題を知り,わが国においても実現可能性のある介護政策改革のヒントが得られると期待できる.
そこで,小論では,ブレア政権が取り組んできた高齢者分野を中心とする介護・福祉政策の問題点や改革の取り組みを紹介し,それらから得られるわが国への示唆を考察したい.
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