鏡下咡語
蜂窩フアントム
永島 二郎
1
1永島医科器械株式会社
pp.310-311
発行日 1978年4月20日
Published Date 1978/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208644
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今は昔,なつかしいカルメ焼,近頃これにもとんとお目にかかれなくなつたが,探せばまだまだどこかにあるもの。東京で云えば,水天宮や大師様,天神様に帝釈天(江戸川区柴又にある帝釈天は映画,寅さんシリーズで有名)で,これらの縁日には懐古調復活のこ時勢か,カルメ焼を含あていろいろな屋台が出ている。
私の住んでいる本郷は,東西と南の三方を下町に囲まれた台地で,どちらかと云えば山の手と云つた部類に属する所かと思うが,縁日に屋台が出て賑わうといつた所が少ない。せいぜいあつて,湯島の天神様か根津権現で,これとて年1回か2回のお祭りがあるだけである。この様なところで生れ育つたせいか,私自身下町の情緒にたまらない魅力を感じるのであつて,なんとかこの情緒にひたりたい想いでいつぱい。そこで最近,家族共共はじめて西新井の大師様に詣り,ついでその付近の下町情緒を満喫してきたが,その帰りしな,門前通りで名物の草餅,せんべい,そしてカルメ焼を土産に買つて帰つた。
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