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色素性苔癬の1例
高橋 萬里子
1
,
伊藤 宜子
1
1東京大學醫學部皮膚科教室
pp.79-81
発行日 1953年2月1日
Published Date 1953/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200907
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本邦近年の所謂女子顔面黒皮症は臨床上,組織學的にRiehl黒皮症としてよく,このものはBu-schkeの所謂苔癬素質を有し,一方内在的の色素沈着準備性をも有する個體に,主として外的因子として油脂の光力學的性質ある成分等の作用が惹起する,組織學的には紅色苔癬の性質を具えた變化であると,これ北村教授の見解であるが,それとは別に本來紅色苔癬の1亞型として色素性苔癬なるものが報ぜられている。即ち外國ではPirila,Ledermann,Edelの症例,Obermiller Lichenruber planus cum pigmentationeがこれに該當する。たゞObermillerのものはHoffmann-Habermannの黒色皮膚炎と同症とも見られている。本邦では女子顔面黒皮症が取上げられる以前,色素性苔癬として坪田,渡邊,北村,竹内等の色素性苔癬の報告がある。はじめに記し後にも觸れるように女子顔面黒皮症即ちRiehl黒皮症が苔癬性の性質を持つことゝ別に,この種色素性苔癬の存在することを我々は認めたく,茲に報ずるものは斯くの如きものである。
患者は23歳の女子,昨昭和26年4月20日初診家族歴に特記すべきことなし。幼時健康であったが,12歳肺炎その後胸部に濕疹を生じ,半年後治癒した。15歳でマントー陽轉。月經は晩く19歳初潮を見て以來今日迄不順,むしろ無月經に近く,しかも月經時下腹部疼痛がある。
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