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無菌膿尿
永田 正夫
1
1日本大學醫學部皮膚科泌尿器科學教室
pp.275-278
発行日 1949年7月1日
Published Date 1949/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200211
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緒言
吾々が膿尿を排出している患者の尿沈渣から作成した染色標本を檢鏡して,そこに何等の細菌をも見出し得なかつた場合に,之に就いてどんな考え方をするのを至當とするだろうか.酸性無菌膿尿の場合には結核を疑うのを一般には鐵則の樣に考えるのを常識としている.染色標本に細菌を證明しない時に,直ちに細菌の存在を否定し得られるだろうか.1枚や2枚め染色標本の檢鏡で無菌膿尿の判定を下す事は早計の謗をまぬがれない.標本作成手技の巧拙は別としても,細菌が極く少數で發見し得ない事もあるだろうし,或いは又理論的にはヴィールスの樣な普通顯微鏡下に證明出來ない樣なものゝ存在も考えねばなるまい.從來は無菌膿尿に對して吾々は結核菌の檢出に努力して來た.尿中結核菌の検出率を高める手段の爲に,先進諸學者は種々考慮を拂われ,これが後進者を益する事多大である.現今では多くの學者は泌尿器結核の患者に就て80-90%の結核菌檢出率を報じているが例え少數でも檢出されない幾らかは殘る事になる.昨年來自分は當教室外來に於て注意すべき無菌膿尿の男子患者を屡々觀察する機會に接し,益々無菌膿尿の問題に就て關心を持たざるを得なくなつた.然も之が最近になつて,同樣な事が一般開業醫家の注意をもひいたとみえ,屡々質問的連絡が自分の許へある樣になつて來た.
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