連載 熱血! 論文執筆コーチング—中堅脳神経外科医が伝えたい大切なこと
第14回 総説の書き方②
森下 登史
1
Takashi MORISHITA
1
1福岡大学医学部脳神経外科
pp.1305-1309
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436205048
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
総説の質
前回,ナラティブレビューを中心に説明しましたが,総説としての質は新規性(novelty)の有無に左右される部分が大きくなります.教科書は知識を読者と共有するためのものですので,そこに著者の意見は必ずしも必要ではありません.基本的に,執筆した文章を論文として出版するには著者としての主張が必要で,その主張をサポートするための論拠を示す必要があります.前回提示した表(Vol 52 No.5, Table 1参照)の中でも示しましたが,ナラティブレビュー論文では,網羅的に論文を引用しませんので,著者のバイアスが大きくなります.逆に,システマティックレビューでは網羅的に論文を引用するので,バイアスが小さくなるのが大きな特徴です.
国内(日本語)のレビュー論文は依頼原稿であることが多いのですが,海外のジャーナルには驚くほどたくさんのシステマティックレビュー論文が投稿されており,その数は増加傾向にあります1).その背景には,基礎実験や臨床研究と異なり,検索データベースを用いれば論文執筆の材料を揃えることができるという手軽さがあります.そのため,海外には「お手軽に増やせる論文業績」と考える研究者や学生も多くいるようです.その点において,第一線で活躍する研究者によるナラティブレビューも存在価値が高く,どちらが優れている,というものではありません.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.