特集 STA-MCAバイパス術—日本が世界に誇る技を学ぶ
Ⅳ各病院におけるSTA-MCAバイパス術の工夫 Short Topics
岐阜大学医学部附属病院におけるSTA-MCAバイパス術の工夫—線状切開下ダブルバイパスにおける皮膚切開の工夫
榎本 由貴子
1
,
吉村 紳一
2
1岐阜大学脳神経外科
2兵庫医科大学脳神経外科
pp.845-846
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204629
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1.はじめに
浅側頭動脈(superficial temporal artery:STA)-中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)バイパス術は皮弁血流を犠牲にして脳血流を増加させる治療であるため,周術期創部合併症のリスクは不可避である.STA剝離後の皮弁血流は帽状腱膜や骨膜,後耳介動脈などSTA以外の外頚動脈枝から供給されるため,これら周囲の代替血流源の進入路を温存する皮膚切開法が好ましい.
皮弁血流温存を第一に考慮すれば線状切開法が最も適しているが,通常はSTA頭頂枝のみのシングルバイパスに用いられる術式であり,STA前頭枝と頭頂枝の両方をdonorとするダブルバイパスの場合にはSTA前頭枝の採取長が不足しがちである.STA前頭枝の分岐高位・走行は個人差が大きく,時には採取できない場合や,長く採取しようとしてT字に切り込むと中央部の創部癒合不良を来す可能性がある.STA-MCAバイパス術後の創部合併症は難治であることが多く,時には皮弁壊死,骨弁感染など再開頭を要する重篤合併症となる可能性があるため,これらの発生を回避しつつ,吻合に足る十分な長さのSTA前頭枝を採取し得るデザインが必要である.
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