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脳神経外科の分野においては,つい数年前まで脳神経外科医の数が多すぎるためbirth controlが必要との議論もあったが,近年は事情が一変し,今われわれは脳神経外科医の希望者の顕著な減少という由々しき問題に直面している.さらに,これにとどまらず,いったん,脳神経外科医を志したものが途中で進路を変更することも多くなり,事態はますます深刻化している.その原因を考えてみると,新しい医師臨床研修システムの導入,医師個人の職業意識の変化,また外科系医師に対する社会の厳しい評価など様々な要因が挙げられるが,これらに加えて若手脳神経外科医に対する教育方法の問題も関与していると考えられる.
若手への教育を彼らの立場から考えた場合,彼らがそもそも何を夢見て脳神経外科を選んだかという点を再考してみる必要がある.脳神経外科医を志す動機は様々である.しかし,脳神経外科が外科的手段をもって神経疾患の治療を行う診療科である以上,多くの医師の最大の動機は自分の手で高度な脳神経外科手術をしたい,特にマイクロサージェリーをしたいといった点であろう.そのための手術教育の手段として,手術書,手術ビデオ,学会参加,他施設へ手術見学,cadaverを用いた手術手技の実習,などを学ぶ機会も少しずつ増えてはいるが,最も重要なのは日々の手術において指導者のアシスタントとして学ぶこと,可能なら自分自身で指導者の指導のもとに手術に携わることである.しかし,医療に対する社会の評価は年々厳しくなっており,いったん合併症を生ずればすぐに訴訟につながるという社会の風潮の中では,経験の少ない若手の医師に術者を任せることは困難となっている.また,欧米に比べ,日本では症例が1施設に集中せず各施設に分散してしまうこともこの傾向に拍車をかけている.そこで,アシスタントとして学ぶことの意義はますます重要となる.こういった点から,われわれ指導医は現状において若い脳神経外科医に手術をより深く,効率よく学んでもらうために何ができるであろうか?
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