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特集 第25回脳のシンポジウム
4.神経科学における分子生物学的アプローチ
3)カドヘリンによる細胞選別と神経系形成(抄録)
Cadherin-mediated cell sorting and neural morphogenesis.
竹市 雅俊
1
Masatoshi TAKEICHI
1
1京都大学理学部生物物理学教室
1Department of Biophysics, Faculty of science, Kyoto University
pp.910
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431900087
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- Abstract 文献概要
カドヘリンは,カルシウム依存細胞間接着に関与する分子群で,複数のタイプからなる。それぞれのタイプのカドヘリンは,ホモフィリックに結合して細胞を結びつけるが,そのさい,同じタイプ同士が選択的に反応する。その結果,同じタイプのカドヘリンを発現する細胞は選択的に接着することになる。このような性質をもったカドヘリンが神経系の形成にどのように関与するか,また,カドヘリンの特異的結合の分子的基礎はどのようなものか,について述べる。
神経組織はNカドヘリンを発現するが,その役割を調べるために,トリ胚の網膜を器官培養し,Nカドヘリンの抗体の影響をみた。その結果,発生初期の綱膜は,抗体により組織が崩壊するが,後期の綱膜は層の形成が異常になるにとどまった。そこで,他のカドヘリンが存在すると予想し,その探索を試みた。方法として,カドヘリンの細胞質領域を認識する抗体は,複数のタイプのカドヘリンに非特異的に反応することを利用した。そのような抗体を用いてトリ網膜をウエスタンブロット解析すると,Nカドヘリン以外にもう一つのカドヘリンが存在していることが明らかになり,そのcDNAをクローニングした。その結果,Nカドヘリンに75%の類似性がある新しいカドヘリンの同定に成功した。
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