特集 実地医家が楽しく学ぶ 「熱」「炎症」、そして「免疫」—街場の免疫学・炎症学
【Ⅰ章:個別の病態で切る!】エキスパートが織りなす怒涛の縦糸—個別から“理屈”をつかむ
❼亜急性甲状腺炎—のどの痛みに潜む甲状腺疾患に要注意
辻本 哲郎
1
1虎の門病院分院 糖尿病内分泌科
キーワード:
亜急性甲状腺炎
,
前頸部痛
,
甲状腺の圧痛
,
赤沈高値
,
甲状腺中毒症
,
甲状腺超音波検査
Keyword:
亜急性甲状腺炎
,
前頸部痛
,
甲状腺の圧痛
,
赤沈高値
,
甲状腺中毒症
,
甲状腺超音波検査
pp.58-61
発行日 2022年1月15日
Published Date 2022/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203551
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Case1
典型的な亜急性甲状腺炎の一例
患者:30歳、女性
現病歴:20XX年4月上旬にのどに痛みが出現し、体温37℃台となり近医を受診したところ、咽頭炎として抗菌薬を処方された。その後も症状の改善を認めず、頸部痛は悪化、体温も39℃まで上昇し、当院受診となった。
身体所見:咽頭内に明らかな異常所見は認めなかった。甲状腺は左右ともに腫大し、圧痛・自発痛を認めた。甲状腺の痛みは左優位で、明らかな硬結はなし。
血液検査:WBC 6,070/μLと基準値内であったが、ESR 134mm/時、CRP 10.61mg/dLと炎症反応高値であった。また、TSH 0.001μIU/mL、FT3 11.94ng/mL、FT4 3.47ng/dLと甲状腺機能異常を認めた。TSH受容体抗体、抗Tg抗体、抗TPO抗体のいずれも陰性であった。
甲状腺超音波検査:甲状腺全体に腫大あり、疼痛部に一致した境界不明瞭な低エコー域が存在した(図1)。囊胞や腫瘤性病変は認めなかった。
以上の所見より「亜急性甲状腺炎」と診断した。
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