- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Case
認知機能低下からセルフネグレクトに陥った、いわゆるゴミ屋敷事例
患者:75歳、男性。単身生活。
現病歴:数年前、認知症疾患医療センターにてAlzheimer型認知症との診断を受け、投薬が開始された。1年前より生活上の混乱、無頓着さ、物忘れの増悪、物盗られ妄想が出現し、薬物調整等が行われたが、治療中断となっていた。
近隣からの連絡で、関わっていた民生委員から地域包括支援センターに連絡が入り、認知症初期集中支援チームが介入を開始した。当初は拒絶的で、特定のチーム員が物盗られ妄想の対象となったが、民生委員の仲介で徐々にチーム員を受け入れるようになり、介入から1カ月後、チーム医(筆者)も訪問した。
室内は尿臭が漂いコバエが舞い、窓にはヒビが入り、ゴミが山積みになり玄関からあふれていた。本人はやせが目立ち困惑した表情で「もうゲームオーバーだよ」「死んじゃうのが一番なんだ」と繰り返していた。日中は外で過ごして夜間は自宅に帰る生活で、パチンコで生活費の大半を浪費し、食費はほぼ残っていない状況であった。現状の変更を望まず、自宅での生活を希望し、受診や施設入所の提案に対しては強い口調で拒絶した。
治療を中断し、医療・介護サービスにつながっていない認知症の方のセルフネグレクト状態と判断し、❶生活保護の医療扶助を受けられるように整え、❷筆者が訪問診療を開始し、❸介護保険申請も行い、❹定期的に弁当が配達されるよう宅配弁当の契約を行った。❺ケアマネジャーを決めて、ヘルパーやデイサービスを導入し、❻本人と相談しながら徐々に部屋の片付けを行った。
その後も訪問診療を継続し、生活への不安は強いものの、デイサービスでは趣味の麻雀やカラオケを楽しんでいる。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.