特集 こんな時は漢方でしょう!
【漢方診療の達人は語る】
総合診療と漢方
村松 慎一
1
1自治医科大学 地域医療学センター 東洋医学部門
キーワード:
地域医療
,
補中益気湯
,
補剤(G1)
,
煩熱
Keyword:
地域医療
,
補中益気湯
,
補剤(G1)
,
煩熱
pp.202-204
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200482
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いま,なぜ漢方か?
漢方薬は天然素材である生薬を組合せて作られており,たとえば,葛根湯は麻黄・葛根・桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草という7種類の植物生薬で構成される.生姜(しょうが)や大棗(なつめ)が食材にもなるように,一般に作用は穏やかである.病原菌を抗菌薬で消滅させ腫瘍を手術で切除する攻撃的な治療に対し,緩徐に生体の抵抗力を高める漢方治療は,交渉により紛争を解決する“熟練の外交官”に喩えられる1).超高齢社会に突入した日本では,複数の慢性疾患を併発している高齢者の総合診療において,漢方薬の適応が増加すると推察される(表1).
漢方薬の多くは生薬を煎じて湯液として服用されてきたが,現在では各生薬から成分を熱水抽出したエキス製剤が市販されており,一定の品質の漢方薬を簡便に使用できる(表2).生薬には複雑な有機化合物が含まれ,その大部分は詳細な作用機序が未解明である.科学的根拠の乏しい古代の観念論に執着する必要はないが,虚実,寒熱,病位,気血水などの基本的な概念を理解すれば,先人の経験則を活用しやすい.
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