特集 動悸・息切れ─ヤバい病気の見つけ方 そして見つからなかった時の対処法
【動悸・息切れ症状の標準的マネージメントとプラスワン】
動悸・息切れを治す漢方治療
小池 宙
1
1慶應義塾大学医学部漢方医学センター
キーワード:
半夏厚朴湯
,
加味逍遥散
,
香蘇散
,
桂枝加竜骨牡蛎湯
,
柴胡加竜骨牡蛎湯
,
炙甘草湯
Keyword:
半夏厚朴湯
,
加味逍遥散
,
香蘇散
,
桂枝加竜骨牡蛎湯
,
柴胡加竜骨牡蛎湯
,
炙甘草湯
pp.48-50
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200047
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Case
患者:86歳,男性.
病歴:1年前に動悸を主訴に救急搬送され入院,精査を行うも器質的異常は認めなかったが,その後も頻回に動悸を訴えていた.1週間前から毎日動悸があり,救急車を呼んでほしいと家族に訴えるため受診した.
既往歴は高血圧のみ.しかし最近の頻回な受診の結果,薬剤は降圧薬・脂質異常症薬・抗血小板薬・高尿酸血症薬・抗不安薬・過活動性膀胱治療薬・冠血管拡張薬・気管支拡張薬と,内服薬合計10種類,貼り薬2種類に増えていた.血液検査と心電図を行うも異常は認めず,漢方治療を行うことにした.脈はやや虚.舌は少し大きく,裂紋があり,舌下静脈が目立つ.歯痕はない.腹はとても力が弱いが腹部動悸は触れない.
全体的に弱々しく気持ちが乱れている印象を受けたので,香蘇散で治療を開始した.高尿酸血症薬,冠血管拡張薬など不要と考えられる薬は中止した.しかし2カ月ほど経つも改善を認めなかった.香蘇散は無効と判断し,半夏厚朴湯に変更した.
3カ月目,「おかげさまで元気でございます」と,とても穏やか.それまでは受診するたびに堰を切ったように長々と訴えがあったが,こちらから声を掛けなければ症状を話すことはなくなった.
7カ月目,半夏厚朴湯を続けて焦燥感は消失したが,なんとなく根が弱い不安定な感じを受ける.もともとの症状ものぼせるような動悸であったことも考え,試しに桂枝加竜骨牡蛎湯に変更した.
7カ月半目,「今までの薬の中で一番良かった!」.
その後,桂枝加竜骨牡蛎湯を続行中.不安定さが落ち着いたら次の調整をしようと思いながら,治療を続けている.
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