JIM臨床画像コレクション
膿疱性血管炎
宮地 良樹
1
1群馬大学医学部皮膚科
pp.365
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902140
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皮膚に膿疱をみた場合,細菌や真菌の感染を想起するのが普通であるが,皮膚科領域では無菌性膿疱という概念が存在し,膿疱をみてもすぐに感染症という診断には到達しない.その代表は掌蹠膿疱症である.角層にIL-8などの好中球走化性因子が作られれば,微生物の関与なしに膿疱が形成されるからで,膿疱性乾癬のような重篤な疾患もあるので,感染症を考えにくい膿疱をみた場合には,培養により無菌性であることを確認したうえで別の診断ステップを踏むべきで,いたずらに抗菌薬投与で様子をみるべきではない.
皮膚血管炎を思わせる紅斑あるいは紫斑上に無菌性膿疱を認めるのが膿疱性血管炎で,組織学的には,表皮に膿疱,その直下に壊死性血管炎の像を呈する疾患群を総称している.膿疱性血管炎のみられる内科疾患としては,Behcet病,淋菌性敗血症,腸管バイパス症候群,慢性関節リウマチなどが挙げられる.その原因は,感染症や自己免疫疾患など多様であるが,共通している病態的特徴は,血中免疫複合体の存在と免疫複合体性血管炎の存在である.例えば,腸管バイパス症候群では盲管部にみられる細菌増殖により免疫複合体が産生され,皮膚血管壁に免疫反応物の沈着がみられ,稠密な多核白血球の浸潤,核塵などを伴う壊死性血管炎がみられる.皮膚疾患では扁桃炎などの病巣感染を契機に免疫複合体性血管炎が惹起されることが多い.無菌性膿疱の生成機序としては,多核白血球の走化性の亢進,多核白血球による免疫複合体の経皮的排除などが想定されている.
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