特集 精神疾患と誤診してはならない器質的疾患
スペシャル・アーティクル
Potentially Reversible Dementias(可逆性かもしれない認知症)
酒見 英太
1
1洛和会音羽病院洛和会京都医学教育センター
キーワード:
認知症
,
認知機能低下
,
可逆性
,
意識障害
,
辺縁系脳炎
Keyword:
認知症
,
認知機能低下
,
可逆性
,
意識障害
,
辺縁系脳炎
pp.128-131
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102104
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認知症は厳密には精神疾患ではないが,老年期患者における精神医学の最大の対象であることに変わりはない.確かに,認知症に分類される疾患のなかには記憶力や判断力の低下が目立たないうちに早期から妄想・幻覚や人格障害をきたすものがあり,認知症を器質的疾患に分類するなら,一部はまさに今回の特集テーマである「精神疾患と誤診してはならない器質的疾患」にあてはまる.しかし本稿では,正しく診断し治療できれば精神疾患様の精神症状を改善できる器質的疾患を紹介するという本号の趣旨にならい,正しく診断しタイミングよく治療できれば,認知症を思わせる認知機能低下を改善できる可能性のある器質的疾患をレビューしたい.
なお,表題では認知症という言葉を用いているが,ここでは軽度の認知機能低下を含めた病態を診断の対象とする.可逆性は往々にして認知機能低下の重症度と逆相関するためであり,かつ可逆性は認知機能の低下が進行する以前の迅速な診断に依存するためである.このため文献によってはdementiaではなくcognitive impairmentと言い換えて論じることを提案しているものもあり1),私も実は同意見であるが,英語も日本語も言葉がやや長くなるので本稿では認知症とした.なお,急性疾患で診療中の患者に急激に発生する動揺性意識障害を伴う一過性の認知機能の障害は,譫妄として比較的容易に鑑別できるのでここでは言及しない.
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