特集 ストップ・ザ・医原性疾患
【医原性疾患エピソード】
ST合剤の副作用
西崎 祐史
1
1聖路加国際病院内科
pp.960
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101280
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症例は,多発性脳梗塞の既往のある,ADL全介助,人工呼吸器管理,経管栄養中の85歳の男性.ある日,左下腿の蜂窩織炎にて発熱を生じ,抗菌薬加療が必要な状態となった.長期入院患者で過去にも同様のエピソードがあり,当時の起因菌がMRSAであったことからバンコマイシン(VCM)の投与が望まれたが,VCMに対するⅠ型アレルギー反応が生じたという情報からST合剤を選択した.感染とそれに伴う脱水の影響から,軽度腎機能障害を併発していた.ST合剤使用後,翌日の血液検査にて高K血症(7.5mEq/l)を認め,緊急でGI(グルコース・インスリン)療法,ケイキサレート(R)の投与にて対応することとなり,それらの処置にて致死的不整脈などの出現はなく,Kも正常に回復した.
このケースを振り返ってみると,2つのポイントが挙げられる.1点目は,VCMを使用しなかった理由が,過去の既往の中でVCMに対するⅠ型アレルギー反応があるという情報のためであったが,red man syndromeをⅠ型アレルギー反応としてとらえていないだろうか? VCMの副作用であるred man syndromeはⅠ型アレルギー反応と症状が似るため,鑑別が困難なので注意が必要である.2点目は,腎機能低下時の薬剤投与に関してであり,腎機能障害を合併している患者の場合には,高K血症を引き起こしやすいとの報告がある(Arch Intern Med 163:402-410, 2003).高K血症は致死的不整脈を生じる危険性があるために,薬剤使用前の十分な患者評価が望まれる.
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