皮膚科医直伝Ⅱ 教科書では教えてくれないコツ[3]
「このほくろは癌なのでしょうか」と聞かれたら?―しみ,ほくろ,皮膚癌を鑑別する初歩
中村 健一
1
1おゆみの皮フ科医院
pp.187-190
発行日 2005年3月1日
Published Date 2005/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100070
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皮膚癌をテーマにテレビの特集番組があると,翌日患者は医院に走り,「自分は癌じゃないだろうか?」と不安な表情で診察室に座る.「ちょっと見せてください.あぁ,これは心配ないですよ.癌ではありません」とスラスラ診断できれば良いのだが,白状すると,大変難しい症例もあり,どんな説明をしたらと困ってしまうことも多い.そんな経験をした医師は多いのではないだろうか?
地域団体などが主催する健康講座に呼ばれることがある.筆者は「子どもの皮膚病」などのテーマで講演することが多いが,子どもに関する話が終了するとお母さんの話題に移ることになる.子どもの話題では,おしゃべりしながら聞いていたお母さん方も,「しみ」「ほくろと皮膚癌」などの話になると急にシーンとなる.しみについては美容上最も気になるところであるが,それ以上に皮膚癌は関心が高い.講演する筆者ににじり寄り,「私のこのほくろ,このしみは癌じゃないのでしょうか?」などの個別相談に移ってしまう.
皮膚に色がつく「良性色素性病変」はそれだけで1冊の本ができてしまうほど奥が深く,内容も膨大である.したがって,一般医だからといって「私にはわかりません.専門家に紹介します」とすべてのほくろについて逃げていたら,ちょっと情けないのではないか?「あの先生,ほくろは全くわからへんで」「眼が悪いんとちゃうか?」「あれでも医者かいな?」などと陰口を言われているかもしれない.
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