交見室
経尿道的膀胱腫瘍切除術施行時のmultiple random mucosal biopsyの意義について
垣添 忠生
1
1国立がんセンター泌尿器科
pp.298-299
発行日 1981年3月20日
Published Date 1981/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203126
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本誌35巻2号に掲載された「経尿道的膀胱腫瘍切除術施行時のmultiple random mucosal biopsyの意義」と題する藤岡,岡本先生らの論文を,膀胱癌に深い関心をいだく泌尿器科医として興味深く拝読した。著者らは20例の膀胱癌患者および既往にTURを受け,経過観察中に尿細胞診のみ陽性の2例,計22例に対しmultiple random mucosal biopsyを施行し,うち7例に上皮内癌を発見している。7例全例に根治的膀胱全摘除術を施行し,全摘標本の全割による病理学的検索を行ない,腫瘍分布地図作製による検討を提示している。著者らが指摘するように,膀胱上皮内癌は内視鏡的に認識するのが難しいこと,尿細胞診は上皮内癌の診断に不可欠の検査であること,TUR施行時潜在する上皮内癌の検索の重要性,疑わしい症例に対する多所粘膜生検を含めた多角的な検査が必要であることなど,いずれもその主張に筆者も全面的に賛成である。治療法として著者らが選択した,7例全例に対する膀胱全摘除術も現時点では筆者も賛成である。しかし,この点に関しては多くの意見が出るところであろう。一つの病態に関し,多くの意見が存在するということは,とりもなおさず病態そのものの全貌が解明されていないことにつきると思われる。
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