円卓討議会 泌尿器癌
Ⅰ.転移の有無による臨床成績の検討—膀胱癌
鈴木 騏一
1
Kiichi SUZUKI
1
1東北大学医学部泌尿器科
pp.506-507
発行日 1968年7月20日
Published Date 1968/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200441
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過去8年6ヵ月間に教室で経験した膀胱腫瘍患者は250例であるが,その治療法としては膀胱部分切除術ならびに根治的膀胱全摘除術を施行している。しかしいまだ手術時浸潤が高度で手術が不可能な症例や,再発による死亡もかなり認められる。そこで私共はこれらの手術不能例ならびに根治的手術施行例の治療成績の分析を行なうとともに,その成績の向上を計るために行なつた研究結果と同時に私共の意見を述べたいと思う。
まず私共は術前に種々なレ線検査ならびに生検を行なつて,転移の有無を検索し,その結果をもとにしてそれぞれの治療法を決定しているが,実際に術前に転移の証明される場合は比較的少なく,いまだ10例に過ぎず,また術中に転移を証明して,根治手術を断念した症例を含めても15例を数えるのみである。すなわちこれら症例に対しては全て尿路変更術を行なうとともに,化学療法または放射線療法を行なつたが,その予後は極めて悪く,消息の判明している13例についてみると,2年生存例は1例のみで,他は全て1年以内に死亡している。
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